Make Your Own Gear
MYOG
自分の道具は、自分で作る。ウルトラライトハイキングの文化から生まれた、ハイカーによる自作ギアの世界。
MYOGとは
MYOG(Make Your Own Gear)とは、アウトドアで使う装備を自分の手で作ること。既製品では満たせない「あと少し軽く」「もう少し自分に合うように」という想いを、自らの手で形にする。それがMYOGの本質です。
この軽量シンプルな道具はハイカーによる創意工夫や自作ギアとして発展してきました。好みや必要に合わせた最適なアイテムを自作することで、個人のニーズにぴったり合った装備を手に入れることができます。
MYOGの始まり
MYOGの提唱者として知られるRay Jardine(レイ・ジャーディン)は、航空宇宙工学出身のエンジニアであり、ロッククライマーでもありました。1980年代、バックパックの総重量が平均25〜30kgだった時代に、彼は装備を自作することで劇的な軽量化を実現しました。母親からミシンの使い方を教わり、タープ、バックパック、キルトなどを自ら縫製。その経験と思想を1992年の『PCT Hiker's Handbook』、1999年の『Beyond Backpacking』で世に広めました。
レイ・ジャーディンは現在もRay-Way製品としてタープ、バックパック、キルトのMYOGキットを販売しています。彼の活動はUltralight Hikingの源流であり、「自分の道具は自分で作る」という思想はMYOGの根幹をなしています。
日本では2008年にULハイキング専門店のハイカーズデポが三鷹に誕生。寺澤英明氏による『山より道具』などのブログ界隈で自作ギアの研究と実践が行われていきました。「こんなんでええねん」という軽量シンプルな装備の精神とともに、日本のUltralight Hikingは始まりました。
SNSが情報の主要な発信地ではなかった時代に、一部のハイカーがブログやウェブサイトで山での経験談や実験結果を共有していました。海外の『Backpacking Light』の掲示板や『山より道具』の影響力は絶大で、ハイカー同士の交流の場としてコミュニティが形成されていきました。2000〜2010年のブログ全盛期は、日本で多くのULブランドが生まれたタイミングでもあります。
日本人初のトリプルクラウナー(PCT・AT・CDTの三大トレイル踏破者)である舟田靖章氏は、2009年にPCTでULスタイルを実践した先駆者です。自らタープやバックパックを自作し、ロングトレイルで実証。TRAILSマガジンでは「舟田靖章のULとMYOGの話」を連載し、MYOGの文化と実践を広く伝えています。
MYOGの哲学
MYOGの哲学は、自身の装備を自作することにあります。軽量化とカスタマイズを通じて、個人のニーズに合った最適な装備を手に入れることができます。
MYOGは模倣からはじめ、自分の好みを見つけながらスタートするのが良い方法です。自分で調べ、体験することでギアを作り上げるプロセスで道具の構造や生産工程を理解できます。
他者の批判や意見に左右されず、メリットとデメリットを理解し、自分らしい方法でアウトドアを楽しむことが重要だと考えています。MYOGを通して自分のアイデアや創造性を追求し楽しみましょう。
自分で作ったものにはより多くの意味がある。心と魂を込めて何かを作れば、そこに意味が生まれる。
Ray Jardine
必要なツール
MYOGを始めるのに特別な設備は必要ありません。基本的なツールがあればスタートできます。
- ミシン 家庭用ミシンでも縫うことができます。職業用ミシンがあるともっと縫いやすいです。パワーが必要の無いところではMIYAGENでもたまに使うことがあります。
- ミシン糸 家庭用ミシン用の#60-30の太さの糸を使いましょう。家庭用ミシンなら#60、職業用ミシンなら#30で問題ありません。アウトドア用品にはフィラメント糸(ビニモなど)がおすすめです。
- ミシン針 糸の太さによって針の太さも変えます。3種類ぐらいあるとさまざまな素材に対応できます。糸番手#30なら針16番が理想的です。
- テフロン押さえ 滑りを良くするのでアウトドア製品の特殊なファブリックに適しています。ミシンの付属品のままでもいいですが、たくさん縫いたいなら交換しましょう。
- クリップ まち針で仮止めをするとせっかくの高性能な生地に穴が空いてしまいます。クリップを使うと穴を開けずに仮固定できます。
- リッパー 糸をほつくために頻繁に使用します。はじめてのMYOGは失敗することも多々あると思います。複雑になるほど失敗する回数も増えていきます。
- その他 目打ち(安全のために必須)、ハサミ、定規(先端が0mmから始まるもの)、チャコペン
はじめ方
MYOGは模倣からはじめ、自分の好みを見つけながらスタートするのが良い方法です。今ではYouTubeにはたくさんの "How to" 動画がありますので、そちらも参考にすることができます。モンベルのデイバッグMYOGキットなど、MIYAGEN以外にもMYOGキットを販売しているブランドがあります。
まずは観察する
手持ちのギアの構造をよく見てみましょう。縫い目の位置、素材の組み合わせ、ジッパーの付け方。道具の構造や生産工程を理解することが第一歩です。
シンプルなものから始める
最初はポーチやスタッフサックなど、シンプルなアイテムがおすすめ。MIYAGENのMYOGキットは初めてのMYOGに最適です。
端材で練習する
本番の前に端材でミシンに慣れておきましょう。まっすぐ縫う練習、カーブを縫う練習。慣れることが何より大切です。
失敗を楽しむ
はじめての縫製で綺麗にできる方が珍しいです。挫折も成功も含めてMYOG。ULとMYOGは失敗と検証の繰り返しです。
カスタマイズする
自分好みに改造してみても楽しいですし、制作前にパターンを採寸して将来自分の好きな生地で作ってもかまいません。生地を追加して仕切りを作ったり、別カラーのファスナーに替えたり、刺繍を入れてみたり。MYOGは自由です!
MIYAGENのMYOGキット
MYOGキット Lastbit Pouch
MIYAGENで販売中のLastbit Pouchと同じパターンのシンプルなポーチです。変哲もないシンプルなポーチですが、はじめてのMYOGには最適。ミシンと針と糸があれば作れます。
キットにはバックパックやファニーパックなどの残端・試作生地の残端を使用しています。そのためカラーや素材はランダムとなります。
ポーチの特徴
内部は仕切りもなくシンプルな設計です。見た目がいいので止水ファスナーを使用しています。左右にはループを設けており、お好みでストラップやリーシュをつけていただけます。スライダーのジッパープル(持ち手)は3Dプリンターで生産したものを採用しています。
おすすめの書籍
MYOGを始めるきっかけとなる本。ULハイキングの思想と道具の構造を深く理解するために。
- Beyond Backpacking / Trail Life Ray Jardine —UL・MYOGの原典。自作装備の設計思想と実践的なパターンが詰まった一冊。タープ、バックパック、キルトの設計図付き。
- ウルトラライトハイキング 土屋智哉(ハイカーズデポ) —日本語で読めるULの入門書。軽量化の考え方から装備選びまで、ULハイキングの基礎を体系的に解説。
- ウルトラライトハイキングギア 寺澤英明 —素材と構造にフォーカスしたギア解説書。生地の特性や縫製の構造を理解するのに最適。
素材・生地の入手先
MYOGに興味を持ったら、次は生地とパーツの入手先を知ること。アウトドア用の高機能素材を扱うショップを紹介します。
- Ripstop by the Roll XPAC、DCF、シルナイロンなどの切り売り。アメリカからの個人輸入になりますが、品揃えは世界最大級。
- TRAILS STORE 日本橋の実店舗とオンライン。DCF/Dyneema等の生地・パーツを販売。MYOGワークショップも開催。
- ハイカーズデポ 三鷹。MYOGマテリアル(生地、プラパーツ、ジッパー)を取り扱い。ULハイキングの聖地。
- その他 山冨ラボ、ユザワヤ等の手芸ショップでも基本材料は入手可能。まずは身近なところから始めてみましょう。
参考になるサイト
MYOGをもっと深く知りたい人のためのリンク集。
- Ray Jardine 公式 Ray-Wayキット(タープ・バックパック・キルト)の購入先。MYOGの原点。
- TRAILS マガジン MYOGer Worksの連載、舟田靖章氏のULとMYOGの連載など。
- ハイカーズデポ 「MYOGへのはじめの一歩のススメ」記事。実店舗でのワークショップ情報も。
- Backpacking Light 海外のULフォーラム。世界中のハイカーが装備の議論や自作ギアの知見を共有する場。
いつかはバックパック…?MYOGを通して自分のアイデアや創造性を追求し楽しみましょう。