BEFORE YOU GO — 出発前にすること
ロングトレイルを歩くと決めたら、最初にやることは「歩く」ことではありません。パーミット(入山許可証)の取得、ビザ、保険、資金計画、そして場合によっては仕事を辞めること。準備に半年以上かかるのが普通です。
PCTで得た経験を元に説明していきます。
パーミット
PCTA(Pacific Crest Trail Association)が発行する Long Distance Permit が必要です。毎年秋に翌年ぶんの申請が始まり、1日あたりの出発人数が制限されています。NOBOの場合、3〜4月のスタート枠は人気が高く、早めの申請が重要です。申請はPCTAの公式サイトからオンラインで行います。
PCTに限らず、人気のあるロングトレイルにはパーミット制度があることが多いです。アメリカのAT(Appalachian Trail)はパーミット不要ですが、JMT(John Muir Trail)は抽選制で倍率が高いです。ニュージーランドのTe Araroaは不要です。トレイルごとに制度がまったく違うので、最初に確認すべきはそこだと思います。
ビザと入国
アメリカの場合、日本国籍ならESTAで90日間の滞在が可能です。ただしPCTスルーハイクは通常5〜6ヶ月かかるため、B-2ビザ(観光ビザ)の取得を推奨します。大使館面接では「PCTを歩く」と正直に伝えれば問題ありません。入国審査でもパーミットを見せれば理解してもらえます。
保険
海外の医療費は高額です。骨折で数百万円の請求が来ることもあります。海外旅行保険かクレジットカード付帯の保険は必須です。山岳遭難や救助搬送がカバーされているか確認してください。国際対応できる山岳保険もあります。
ロングトレイルが海外なら保険は必須です。国によって医療費の相場が大きく違います(アメリカは特に高いです)。山岳遭難・ヘリ搬送のカバー範囲は保険によって差があるので、「トレイル上で動けなくなったとき」を想定して選ぶのがいいと思います。
費用
PCTスルーハイクの総費用は、渡航費込みで120〜200万円が目安。内訳はおおよそ以下の通り。
- 渡航費(往復航空券): 15〜25万円
- 装備(新規購入ぶん): 15〜30万円
- トレイル上の生活費(食料・宿・洗濯等): 50〜80万円
- 保険: 2〜15万円
- ビザ・パーミット・その他: 5〜10万円
タウンでの宿泊頻度や食事のスタイルで大きく変わります。自炊中心なら安く抑えられますが、たまにはモーテルでシャワーを浴びてピザを食べたいものです。そのぶんの予算は精神衛生費だと思っています。
費用感はトレイルと国で大きく変わります。アメリカのトレイル(PCT・AT・CDT)は町での滞在費が高いです。ニュージーランドのTe Araroaはハット(山小屋)料金が比較的安いですが食料が高いです。スペインのCamino de Santiagoはアルベルゲ(巡礼宿)が格安です。「タウンでいくら使うか」がどのトレイルでも最大の変動要因だと思います。でも仕事から全て解放された精神状態で歩くロングトレイルは異常に面白いです。
TIPS: 仕事を辞めるということ
PCTを歩くには5〜6ヶ月の休みが必要になります。会社員なら休職か退職かの選択を迫られます。自分は退職して歩きました。「帰国後どうするか」は歩きながら考えればいい — 実際、4,200km歩いた後には考え方が変わっていました。MIYAGENはその延長線上にあります。
これはPCTの話ですが、1ヶ月以上の長期ハイクなら同じ問題に直面します。Camino de Santiago(約1ヶ月)なら有給でいけるかもしれません。期間の短いトレイルから始めて感覚を掴む、というのもひとつの方法だと思います。
TIPS: PCT準備タイムライン
「いつ何をすればいいのか」が一番迷うところだと思います。自分の場合のスケジュール感を書いておきます。
| 1年前 | 情報収集を始めます。Halfway AnywhereやPCTAのサイトを読みます。「歩くかどうか」を決める時期です。日本での登山・ハイキングで体力づくりも始めましょう。 |
| 6ヶ月前 | パーミット申請(11月開始)。NOBOの3〜4月は激戦です。ここで日程がほぼ決まります。航空券の目星をつけ始めましょう。早めに買うほうが安いです。 |
| 3ヶ月前 | 装備の最終決定。大きな買い物(バックパック、シェルター、寒地用ギア)を揃えます。保険の加入。B-2ビザの申請(ESTAでは90日しか滞在できません)。 |
| 1ヶ月前 | 装備のシェイクダウン。30km以上のテストハイクをしておきましょう。バウンスボックスの準備(必要な場合)。スマホのアプリ設定(FarOut、地図ダウンロード)。 |
| 1週間前 | 最終パッキング。ベースウェイトを計量して記録しておきます。家族・知人に緊急連絡先を共有。「完璧な準備なんてない」と割り切りましょう。足りないものは現地で買えます。 |