HIKER FOOD

ロングトレイルの食事と食料計画。
4,265km歩いて学んだ「歩くための食べ方」。

PCTを5ヶ月歩いて、食事に対する考え方が完全に変わりました。「おいしいかどうか」より「1gあたり何kcalあるか」が判断基準になります。チョコレートは溶けるからダメ。パスタは水を使うから砂漠では不向き。ナッツは最強ですが飽きます。

こういう細かい話は、歩いてみないとわかりません。TRAIL GUIDEではセクション別の食料事情を書きましたが、ここではもっと具体的に、「何を・どう選んで・どう食べていたか」を書きます。レシピもつけました。アメリカのトレイルタウンで手に入るものだけでなく、日本から持っていける食材や日本のトレイルで使えるものも紹介します。トレイルだけでなく、週末のハイキングやキャンプでも使えると思います。

01

ハイカーフードの基本 — カロリー密度という考え方

kcal/gがすべて

ロングトレイルの食料選びで最も重要な数字は「カロリー密度」— 1gあたり何kcalあるか、です。荷物を軽くしたいなら、同じカロリーをより軽い食材で摂ります。

食材 カロリー密度 メモ
オリーブオイル 9.0 kcal/g 最強。何にでもかけます。小さいボトルに詰め替え
ピーナッツバター 5.9 kcal/g トルティーヤに塗ります。重いですが満足感が高いです
ナッツ類(ミックス) 5.5〜6.5 kcal/g 行動食の主力。マカダミアが最高密度です
チョコレート 5.0〜5.5 kcal/g 砂漠で溶けます。シエラ以降なら有効です
インスタントラーメン 4.0〜4.5 kcal/g 調理5分。スープも飲めば水分補給にもなります
オートミール 3.8 kcal/g 朝食のベース。粉末ミルクと合わせます
クスクス 3.6 kcal/g パスタより調理が早いです(お湯を注ぐだけ)
ドライパスタ 3.5 kcal/g 夜飯の主力。水と燃料が必要です
とれいる羊羹 3.0 kcal/g 40℃で溶けません。片手で食べられます
ドライフルーツ 2.5〜3.5 kcal/g 糖分補給。重いわりにカロリー密度は低めです
柿の種 4.7 kcal/g 日本が誇る最強行動食。塩分+炭水化物+軽量。小袋タイプが便利です
じゃがりこ 5.0 kcal/g 砕いてお湯を注げばマッシュポテトになります。コールドソークにも使えます
アルファ米 3.6 kcal/g お湯で15分、水で60分。フードキャニスターでコールドソークもできます
フリーズドライ味噌汁 3.0〜3.5 kcal/g 塩分補給に最適。軽量で海外トレイルでも重宝します
カレーメシ / カレールー 4.0〜4.5 kcal/g アルファ米+ルーで即席カレー。疲れた日の救世主です

「カロリー密度が高い=正義」ではない

ナッツとオリーブオイルだけで5ヶ月歩けるかと言えば、無理です。飽きます。メンタルが死にます。「たまにカロリー密度が低くても食べたいもの」を入れる余裕が大事です。自分はドライフルーツ(密度は低いが甘い)とチップス(かさばるが塩分補給)を必ず入れていました。これは精神衛生費です。

02

PCTで毎日食べていたもの — 実録フードログ

朝(調理なし・5分で出発)

朝は火を使いません。テントを畳みながら食べられるものだけです。

  • インスタントコーヒー1杯(前の夜に水を入れておいたボトルで溶かします)
  • グラノーラバー × 2本(約400kcal)
  • 残りは歩きながら食べます

合計: 約500kcal / 所要時間: 5分

朝に調理する人もいますが、自分は「朝の時間はとにかく短く」派でした。調理するとパッキングが遅れ、涼しい時間帯を逃します。砂漠セクションでは朝5時半に歩き始めていたので、なおさらです。

行動食(全カロリーの60〜70%)

ロングトレイルでは行動食がカロリー摂取の主力になります。歩きながら食べるので、「袋から出してそのまま食べられる」が条件です。

  • とれいる羊羹 × 2〜3本
  • ミックスナッツ(1日200g = 約1,200kcal)
  • ドライマンゴー or レーズン
  • ポテトチップス(小袋)— 塩分補給を兼ねます
  • スニッカーズ or M&M's(シエラ以降、溶けない気温帯で)
  • 柿の種(小袋)— 日本から持参。塩分補給+軽量で最強の行動食です

合計: 約2,000〜2,500kcal

行動食は「自分だけのトレイルミックス」を見つけるのがコツです。最初は色々試して、2週間くらいで「飽きないセット」が決まってきます。日本から持参できる行動食(柿の種、とれいる羊羹、ドライ味噌汁など)は海外トレイルでも心強い味方です。

夜(調理あり・唯一の温かい食事)

1日の楽しみです。ストーブとポットを使って、その日唯一の温かい食事を作ります。

  • クスクス or ラーメン(ベース)
  • ツナパック or チキンパック(タンパク質)
  • オリーブオイル 大さじ2(約240kcal追加)
  • スパイス(赤唐辛子フレーク、ガーリックパウダー)

合計: 約700〜900kcal / 調理時間: 10〜15分

オリーブオイルを追加するだけで200kcal以上プラスできます。味も良くなります。これは全ハイカーに伝えたいTipsです。

調理のスタイルとしては、フードキャニスター500を使ったコールドソーク(水で戻す調理法)や、Iso COZYで保温しながら蒸らす方法もあります。コールドソークなら燃料が不要になり、Iso COZYの保温調理なら沸騰直後に火を止めて蒸らすだけで燃料消費を大幅に減らせます。自分はIso COZYを使うことで、他のハイカーが町ごとにガス缶を買い足す中、1ヶ月に1回の購入頻度で済みました。

タウン飯(ゼロデイのごほうび)

町に着いたらまず食べます。Hiker Hungerに任せて、とにかく食べます。PCTのタウンで自分がよく食べていたものです。

  • ピザ(1人でLサイズ完食が普通になります)
  • バーガー + フライドポテト + ミルクシェイク
  • メキシカン(ブリトー、タコス)— カリフォルニアでは鉄板です
  • 朝食ビュッフェがあるモーテルは神です

タウン飯はカロリー密度とか関係ありません。食べたいものを食べたいだけ食べます。5ヶ月で10kg痩せた体が「もっとくれ」と言っています。

03

トレイルレシピ集

ここで紹介するのは全部、PCTでリピートしていたメニューです。共通のルールは3つ: 調理時間15分以内、材料は町のスーパーで買える、ポットひとつで完結。

レシピ① トルティーヤラップ

所要時間: 0分(調理不要) | カロリー: 約500〜700kcal | 重量: 約200g

材料:

  • フラワートルティーヤ 1〜2枚
  • ピーナッツバター or ヌテラ
  • ドライフルーツ or バナナ(町で買えた場合)
  • はちみつ — あれば

作り方:

  1. トルティーヤにピーナッツバターを塗ります
  2. 具を乗せて巻きます

昼食や「歩きながら食べる夕飯」に最適です。火を使いません。トルティーヤはパンより日持ちします(常温で1週間は余裕です)。砂漠セクションではほぼ毎日これを食べていました。ピーナッツバター+はちみつ+バナナは「トレイルの定番コンボ」です。

レシピ② オーバーナイトオーツ(朝食アップグレード版)

所要時間: 前夜5分 + 翌朝0分 | カロリー: 約600kcal | 重量: 約150g(乾燥時)

材料:

  • オートミール 80g
  • 粉末ミルク 大さじ2
  • ナッツ、ドライフルーツ
  • はちみつ or 砂糖

作り方:

  1. 前夜、容器にオートミール+粉末ミルク+水を入れて蓋をします
  2. 翌朝、ナッツとドライフルーツを混ぜて食べます

「朝は火を使わない」ルールを守りつつ、グラノーラバーより満足感のある朝食です。シエラ以降の寒い朝はこれが助かりました。朝に余裕がある日限定です。フードキャニスターに入れて蓋をしておけば、夜間のコールドソークにちょうど良い容器になります。

レシピ③ 自作トレイルミックス

カロリー密度: 約5.5 kcal/g | 1日分重量: 約200g

自分のベース配合:

  • ミックスナッツ(カシューナッツ、アーモンド、マカダミア): 50%
  • M&M's or チョコチップ: 25%
  • ドライクランベリー or レーズン: 15%
  • プレッツェル or 小魚(塩分枠): 10%

ジップロックに1日分ずつ小分けにしておきます。町の補給のたびに作り直します。配合は好みでいくらでも変えられますが、「甘い・しょっぱい・脂質」の3要素を入れるのがコツです。全部甘いと3日で嫌になります。

フードキャニスター × Iso COZYのレシピ

ここからはフードキャニスター500Iso COZYを使ったレシピです。フードキャニスターはコールドソーク(水で戻す調理法)にもホット調理にも対応する500ml容器(67g)で、110サイズのOD缶と同じ直径なのであらゆるクッカーに収納できます。Iso COZYは超臨界発泡PEとアルミ蒸着PEを使った保温カバー(50g)で、沸騰したお湯で蒸らすだけの保温調理が可能です。この組み合わせで燃料消費を大幅に減らせます。

レシピ④ ラーメンボム(フードキャニスター)

所要時間: 5分(お湯)/ 1〜2時間(水) | カロリー: 約600kcal | 重量: 約150g

材料:

  • 袋ラーメン 1袋
  • インスタントマッシュポテト 大さじ3(もしくは砕いたじゃがりこ)
  • カレー粉(お好み)

作り方:

  1. 袋ラーメンを砕いてフードキャニスターに入れます
  2. インスタントマッシュポテト(もしくは砕いたじゃがりこ)、粉末スープの半分を入れます
  3. お湯を注いで蓋をし、Iso COZYに入れて3分待ちます(水の場合は1〜2時間コールドソーク)
  4. お好みでカレー粉や胡椒、残りの粉末スープを加えて完成です

PCTで多くのハイカーがやっていた定番レシピです。マッシュポテトがスープを吸ってもちもちした食感になります。じゃがりこを使うと日本人にはなじみ深い味になります。コールドソークなら燃料ゼロで作れるのが最大の魅力です。

レシピ⑤ アルファ米カレー(フードキャニスター)

所要時間: 20分(お湯)/ 60分(水) | カロリー: 約500〜600kcal | 重量: 約130g

材料:

  • アルファ米 1袋(100g)
  • カレールー 1かけ(もしくはカレー粉 小さじ1)

作り方:

  1. アルファ米とカレールーをフードキャニスターに入れます
  2. お湯を注いで蓋をし、Iso COZYに入れて約20分蒸らします
  3. 完成。水の場合は約60分でコールドソークできます

日本から持参するアルファ米の定番の食べ方です。カレールーは個包装タイプが便利です。Iso COZYの保温力で、お湯を沸かした直後に火を止めても十分に蒸らせます。海外トレイルで日本の味が恋しくなったときの救世主です。

レシピ⑥ フリーズドライ保温調理(Iso COZY)

所要時間: 10〜15分 | カロリー: 商品による | 重量: 商品による

材料:

  • 市販のフリーズドライ食品(モンベル リゾッタ、尾西 白飯、サタケ マジックライスなど)

作り方:

  1. フリーズドライ食品のパッケージにお湯を注ぎます
  2. パッケージごとIso COZYに入れて蒸らします
  3. 規定時間より少し短くても、保温されているので十分に戻ります

Iso COZYはモンベル リゾッタ、サタケ マジックライス、尾西食品、Backpacker's Pantry、MOUNTAIN HOUSEなど主要なフリーズドライのパッケージサイズに対応しています。パッケージごと入れるだけなので、手間がかかりません。寒い環境ではお湯が冷めてフリーズドライが十分に戻らないことがありますが、Iso COZYの断熱性能で最後まで温かく仕上がります。

04

食料計画のつくり方 — 日数×重量×カロリー

ステップ1: 区間の日数を決める

まず「次の補給ポイントまで何日か」を決めます。PCTの場合、FarOutアプリやHalfway Anywhereの補給ガイドで町間の距離がわかります。

町間の距離 ÷ 1日の歩行距離 = 必要日数(+ 予備0.5〜1日)

例: Kennedy Meadows → Kearsarge Pass = 約145km。1日30kmペースなら4.8日 → 6日分の食料を持ちます(シエラは標高が高くペースが落ちるので余裕を持ちます)。

ステップ2: 1日の目標カロリーを設定

ロングトレイルでの1日の消費カロリーは3,000〜5,000kcalです。ペースと体重で変わりますが、自分の場合はこうでした。

  • 砂漠セクション(30km/日): 約3,500kcal
  • シエラ(25km/日、標高差大): 約4,000kcal
  • 後半(35km/日): 約4,500kcal

最初から全カロリーを食料で賄うのは無理です(重すぎます)。実際には「80%くらいを食料で摂り、残りは体脂肪が補う」感覚です。体重が減るのは避けられません。

ステップ3: カロリー密度で食材を選ぶ

目標カロリーが決まったら、それを「できるだけ軽い食材」で達成します。

計算例(1日3,500kcalの場合):

食事 食材 重量 カロリー
グラノーラバー×2 80g 400kcal
行動食 ナッツ200g + 羊羹2本 + チップス小袋 320g 1,600kcal
クスクス+ツナ+オリーブオイル 220g 670kcal
予備 スニッカーズ1本 + ドライフルーツ 100g 550kcal
合計 720g 3,220kcal

1日720g × 6日 = 4.3kg。これがパックに入る食料の重量です。タウンでの食事やボーナスカロリー(町で買い食い)を足せば十分3,500kcal以上を確保できます。水と合わせるとパックの総重量がイメージできます。

ステップ4: パッキングと管理

  • 1日分ずつジップロックに小分けします(「今日の食料袋」を朝取り出します)
  • ベアキャニスター必須区間では容量に収まるか事前確認します
  • 調味料(塩、スパイス、オリーブオイル)は別の小袋にまとめます
  • 最終日の食料は少し多めにします(予備日の保険です)

この計算を区間ごとに繰り返します。PCTでは20回以上補給したので、20回この計算をしました。最初は面倒ですが、3回目くらいで自分のパターンができてきます。

05

買い出しのリアル — アメリカのトレイルタウンで何が買えるか

町の規模で選択肢が変わる

PCTの補給タウンには「Walmart級の大きな町」と「ガスステーションしかない集落」があります。

大きな町(例: Big Bear Lake、Mammoth Lakes、Bend): Walmartやスーパーマーケットがあり、何でも揃います。ナッツ、パスタ、ツナパック、オリーブオイル、ドライフルーツ。食料計画通りに買えます。

小さな集落(例: Agua Dulce、Belden): 小さなストアかガスステーションのみです。選べるのはインスタントラーメン、チップス、キャンディバーくらいです。「あるもので組み立てる」力が必要になります。

日本人ハイカーの強い味方

アメリカのスーパーで買えるもので、日本人の口に合うものリストです。

  • Maruchanラーメン — 醤油味が比較的まともです
  • Idahoインスタントマッシュポテト — 意外とおいしいです。バター味推奨です
  • Knorrのライスサイド or パスタサイド — クリーミーな味つき米/パスタです
  • Starkist ツナパック — アメリカのツナ缶は袋タイプが主流で軽いです
  • Justinのピーナッツバター小袋 — 個包装で便利です
  • Tortilla(トルティーヤ) — パンより日持ちします。何にでも使えます

ハイカーボックスの存在

トレイルタウンのホステルやストアには「ハイカーボックス」が置いてあることが多いです。他のハイカーが置いていった不要な食料を自由に持っていける仕組みです。ここで食料を補充できると出費が減ります。自分も何度も助かりました。逆に、いらない食料があれば入れていきます。Give and Takeの文化です。

日本のトレイル・ハイキングでの食料調達

日本でのハイキングや縦走では、食料の入手先が海外とはまったく違います。コンビニの存在が圧倒的に強いです。

  • コンビニ — 登山口に向かう途中で買い出しできる最強の補給基地です。おにぎり、パン、ナッツ、チョコレート、カロリーメイト、柿の種、干し梅など、行動食が何でも揃います
  • スーパー・ドラッグストア — アルファ米、フリーズドライ食品、インスタントラーメン、フリーズドライ味噌汁などが手に入ります。ドラッグストアのプロテインバーやナッツ類もコスパが良いです
  • 山小屋 — 有人小屋ではカップラーメンや飲料を販売していることが多いです。ただし価格は平地の2〜3倍です
  • アウトドアショップ — フリーズドライ食品やアルファ米の品揃えが豊富です。出発前にまとめ買いしておくのがおすすめです

日本のハイキングではフードキャニスターが特に活躍します。コンビニで買ったアルファ米やフリーズドライ食品をお湯や水で戻すのに最適です。Iso COZYと組み合わせれば保温調理もでき、燃料の節約にもなります。

TIPS: MIYAGENの食まわりギア

とれいる羊羹はPCT 4,265kmで毎日食べていた行動食です。40℃の砂漠でも溶けず、片手で封を切ってそのまま食べられます。開発のきっかけは「歩きながら食べられる日本の行動食がほしい」というPCTでの実感でした。

フードキャニスター500は調理・保存・食事を1つで完結させる500mlの容器です。コールドソーク(水戻し)にも湯戻しにも使え、フリーズドライやアルファ米の調理にぴったりです。このページのレシピの多くはフードキャニスターで作れます。

Iso COZYはフードキャニスター専用の保温カバーです。お湯を注いでIso COZYに入れておけば保温調理ができ、ガス燃料の節約にもなります。寒い季節の山行では温かい食事を長くキープできるのも大きなメリットです。